先発投手が勝っている状態で降板したのに勝ち投手にならないのはなぜ?

プロ野球の試合結果を見ていて、

「先発投手が5回まで投げて、3-1で勝っていたのに勝ち投手になっていない」

ということがあります。

5回も投げた。

リードしていた。

チームも最終的には勝った。

それなのに勝利投手は別のリリーフ投手。

少し不思議ですよね。

投手の「勝ち」は、降板した時点のスコアだけで決まるわけではありません。

先発投手が勝利投手になる基本条件

まず先発投手の場合、原則として勝利投手になるには5イニング以上を投げる必要があります。

たとえば、

5回終了時点で3-1
↓
先発投手Aが降板
↓
6回以降もリードを守る
↓
5-2で勝利

なら、基本的には先発投手Aに勝利が記録されます。

先発投手が勝ち投手になる典型的なパターンです。

ただし重要なのが、

先発投手が降板したあとも、そのリードが維持されること

です。

降板後に同点になったら「勝ち」は消える

たとえば、

5回終了 3-1
先発投手Aが降板
↓
6回 リリーフ投手が2点を失う
↓
3-3

となったとします。

この時点で先発投手Aの勝利投手になる権利はなくなります。

その後、

7回に味方が勝ち越して4-3
↓
そのまま勝利

となっても、Aに勝ちは戻ってきません。

ここが重要です。

一度同点になったあとに再び味方が勝ち越しても、先発投手の勝利が復活するわけではありません。

「最終的に勝ったんだから先発に勝ちでいいのでは?」とはならない

試合を結果だけ見ると、

先発A 5回1失点
チーム 4-3で勝利

なら、Aが勝ち投手でもよさそうに見えます。

しかし実際の試合では、

Aが作った3-1のリード
↓
3-3に追いつかれる
↓
その後、改めて4-3に勝ち越す

という流れです。

勝敗の基準となるリードが一度リセットされています。

そのため後から生まれた勝ち越しについては、その時点の投手起用をもとに勝利投手が決まります。

逆転された場合も同じ

もちろん同点だけでなく、一度逆転された場合も先発投手の勝利はなくなります。

5回終了 4-2
↓
先発Aが降板
↓
6回表 3失点
↓
4-5
↓
6回裏 味方が2点
↓
6-5
↓
そのまま勝利

この場合もAは勝利投手にはなりません。

Aが降板したときは確かに勝っていました。

しかしその後、一度相手にリードを許しています。

最終的にチームが勝ったとしても、Aの勝利にはなりません。

同点にならなければ点差が縮まっても大丈夫

反対に、

5回終了 5-1
↓
先発Aが降板
↓
6回 3失点
↓
5-4
↓
そのまま勝利

ならどうでしょうか。

この場合は一度も同点になっていません。

5-1から5-4まで追い上げられていますが、味方はずっとリードしています。

したがって、ほかの条件に問題がなければ先発Aが勝利投手になります。

重要なのは、

何点取られたかではなく、リードが途切れたか

です。

5回を投げ切る前に降板したら?

もう一つよくあるのが、

「勝っているのに4回で降板」

というケースです。

たとえば、

4回終了 5-0
先発Aが降板
↓
その後もリード
↓
8-1で勝利

だったとします。

Aは無失点。

チームも一度も追いつかれていません。

それでも通常、先発Aには勝利がつきません。

先発投手が勝利投手になるために必要な投球回数を満たしていないためです。

なぜ先発だけ5回必要なの?

野球は通常9イニングです。

そのため先発投手には、試合の過半に近いところまで投げることが勝利投手になるための一つの基準として設けられています。

仮にこの条件がなければ、

1回だけ投げる
↓
1-0でリード
↓
降板
↓
残り8回をリリーフ陣が無失点

でも先発に勝ちがつくことになってしまいます。

そこで通常の9回の試合では、先発投手には5イニング以上という条件があります。

雨天コールドなら5回未満でも勝利投手になる?

ここは例外があります。

試合そのものが5回より短い形で正式に成立した場合です。

たとえば雨によって試合が途中で終了し、それでも正式試合として成立したケース。

こうした場合には、先発投手に通常の「5回」がそのまま要求されないことがあります。

つまり、

先発は絶対に5回投げなければ勝てない

とだけ覚えると、例外で混乱します。

通常の9回制の試合では5回が基本、と考えると分かりやすいです。

5回途中でランナーを残して降板したら?

さらにややこしいケースです。

5回表。

先発Aのチームが3-1でリードしています。

しかしAが一死一、二塁のピンチを作って降板。

リリーフBが登板しました。

この場合、Aは5回を完了していないので、通常は先発投手としての勝利条件を満たせません。

しかも残した走者が生還すれば、その失点はAに記録される可能性があります。

「5回までマウンドに上がった」

ことと、

「5イニングを投げた」

ことは同じではありません。

5回表まで投げれば5回ではない

これも野球を見始めたころには混乱しやすいところです。

たとえば5回表に登板している先発投手が、二死で降板。

表示上は「5回」まで投げています。

しかし投球回は、

4回2/3

です。

5回を完了していないため「5回投げた」ことにはなりません。

一方、5回の3アウト目まで取れば、

5回

になります。

勝利投手の条件を見るときは、「何回に降板したか」ではなく実際の投球回を見る必要があります。

先発が勝ち投手になれなかったら誰に勝ちがつく?

では先発が4回で降板し、その後一度も同点にならずに勝った場合、誰が勝利投手になるのでしょうか。

ここで、

「じゃあ5回を投げたリリーフに自動的につく」

という単純なルールにはなりません。

リリーフ投手が複数登板した場合、その投球内容などを踏まえて公式記録員が勝利投手を決定するケースがあります。

そのため、

先発 4回無失点
リリーフA 1回無失点
リリーフB 2回無失点
リリーフC 1回無失点
抑え 1回無失点

という試合で、誰に勝利が記録されるかは、単純に「5回を投げた人」だけを見ても分かりません。

リリーフ投手なら1球でも勝利投手になれる

ここが先発との大きな違いです。

先発には通常5回以上という条件があります。

一方、リリーフ投手には、

「最低1イニング投げなければ勝てない」

という条件はありません。

そのため状況によっては、

たった1球で勝利投手

になることもあります。

1球を投げてアウトを取る。

その直後に味方が勝ち越す。

そのリードを最後まで守る。

こうした条件が重なれば、1球しか投げていない投手に1勝が記録されることがあります。

100球以上投げた先発に勝ちがつかず、1球だけ投げたリリーフに勝ちがつく。

勝利投手という記録の面白いところです。

「先発の勝ちが消えた」と実況で言うのはこのため

野球中継で、

「これで○○投手の勝ちはなくなりました」

という実況を聞くことがあります。

多くの場合、その投手はすでに降板しています。

たとえば先発Aが6回1失点、3-1で降板。

ところが8回にリリーフが2点を失って3-3。

ここで実況が、

「先発Aの勝ちはなくなりました」

と言います。

Aはもうベンチにいるので何もしていません。

それでも後続投手が同点にされたことで勝利投手の権利を失います。

投手の勝敗は本人の投球だけでは決まらないことがよく分かる場面です。

逆に負け投手の条件も試合展開に左右される

勝利投手と同じように、敗戦投手も単純に「一番点を取られた投手」ではありません。

たとえば先発が7失点。

リリーフが1失点。

最終スコアが8-9。

だから先発が敗戦投手――とは限りません。

どの失点によって相手が勝ち越し、そのリードが最後まで続いたのかが重要になります。

そのため大量失点した投手に敗戦がつかず、わずか1失点のリリーフ投手に敗戦が記録されることもあります。

勝敗だけで投手内容を判断できない理由

先発投手が、

7回無失点

という素晴らしい投球をしても、0-0で降板。

その後、味方が得点して勝てば先発には勝ちがつかないことがあります。

反対に、

5回5失点

でも、味方が大量援護してリードを保ったまま勝てば勝利投手になる可能性があります。

そのため投手を評価するときには、勝利数だけでなく、

防御率
投球回
奪三振
WHIP
QS

など、さまざまな数字を見る必要があります。

勝利数は投手本人だけでなく、味方打線やリリーフ陣にも大きく左右される記録だからです。

降板したあとも先発投手の「勝ち」に注目すると面白い

先発投手がリードした状態でマウンドを降りる。

ここで、

「今日は○○が勝ち投手だな」

と思ってしまいがちです。

しかし、まだ確定ではありません。

後続投手がリードを守れるか。

一度でも同点にならないか。

先発は必要なイニングを投げているか。

こうした条件が最後まで関係します。

次に先発投手が勝っている状態で降板したら、その後のスコアにも注目してみてください。

同点になった瞬間、

「あ、先発の勝ちが消えた」

と分かるようになると、リリーフ登板を見る面白さも少し変わってきます。

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