プロ野球の投手成績を見ると、「失点」と「自責点」という2つの数字があります。
たとえば、
失点:35
自責点:31
のように、失点した数より自責点のほうが少なくなっている投手がいます。
「4点はどこに行ったの?」
と初めて見ると少し不思議ですよね。
さらに試合を見ていると、
「エラーの後にホームランを打たれたら自責点?」
「自分のエラーならどうなる?」
「暴投で入った点は?」
など、判断に迷う場面もあります。
今回は、意外と複雑な「失点」と「自責点」の違いをできるだけ分かりやすく整理します。
失点とは?
失点はシンプルです。
その投手が登板している間に相手チームに入った得点のうち、その投手に記録される得点
です。
3点を失えば基本的には3失点です。
ただし、投手交代時に残した走者が後から生還した場合などもあるため、単純に「マウンドにいたときにホームを踏まれた人数」だけで決まるわけではありません。
自責点とは?
自責点は簡単にいうと、
投手が責任を負うべき失点
です。
ヒットやホームラン、四球などをきっかけに得点された場合は、基本的に投手の自責点になります。
一方、野手のエラーなどが得点に大きく関係した場合には、失点は記録されても自責点にならないことがあります。
つまり、
失点=実際に投手に記録された得点
自責点=その中で投手の責任と判断された得点
と考えると分かりやすいでしょう。
そのため基本的に、
失点≧自責点
となります。
なぜ自責点という記録が必要?
投手が完璧に打ち取ったゴロを野手がエラーして、その走者が得点したとします。
その1点まで完全に投手の責任として扱ってしまうと、投手の成績を正しく評価しにくくなります。
そこで守備のミスなどを考慮し、
「この失点は本当に投手の責任なのか?」
を判定するために自責点があります。
そして、投手成績でおなじみの「防御率」は失点ではなく自責点を使って計算します。
防御率は失点ではなく自責点から計算する
防御率の計算式は、
自責点×9÷投球回
です。
たとえば9回を投げて3失点した投手がいたとします。
3失点すべてが自責点なら、防御率は3.00です。
ところが3失点のうち2点がエラーなどによる非自責点で、自責点が1だった場合、
1×9÷9=1.00
となります。
同じ3失点でも防御率は1.00です。
「今日は3点取られたのに防御率がほとんど悪くなっていない」
ということがあるのは、このためです。
エラーで出塁した走者が得点したら?
分かりやすいのが、エラーで出塁した走者です。
たとえば、
1アウト走者なし
↓
打者Aがショートゴロ
↓
ショートがエラーしてAが出塁
↓
次の打者Bがホームラン
というケースを考えます。
実際のスコアでは2点が入ります。
しかしAは、本来ならショートゴロでアウトになっていたはずの走者です。
そのため、自責点を判断するときにはエラーがなかった場合を考える必要があります。
ここから少し話が複雑になります。
「エラーの走者だけ自責点なし」とは限らない
先ほどの例を少し変えます。
2アウト走者なし
↓
打者Aがショートゴロ
↓
ショートがエラーして出塁
↓
打者Bがホームラン
この場合、エラーがなければAのショートゴロで3アウトになり、イニングは終わっていたはずです。
つまり、その後のホームラン自体が本来なら存在しなかったことになります。
そのため、こうしたケースではホームランで入った点についても自責点にならないことがあります。
ここが自責点の面白く、そして分かりにくいところです。
単純に、
「エラーで出た走者の得点だけを除けばいい」
というわけではありません。
エラーがなければ3アウトだったかを考える
自責点を理解するときに便利なのが、
「エラーがなかった世界でイニングを再現する」
という考え方です。
たとえば、
1アウト
↓
内野ゴロをエラー
↓
三振
↓
ホームラン
だったとします。
実際にはホームランまで攻撃が続いています。
しかしエラーになった内野ゴロをアウトとして考えると、
内野ゴロ=2アウト
三振=3アウト
です。
本来ならここで攻撃終了。
その後のホームランは起きなかったことになります。
このように、実際の試合とは別に「失策などがなかった場合ならどうなっていたか」を考えて自責点を判断します。
エラーの後に打たれたホームランでも自責点0はあり得る
ここまで読むと、
「じゃあホームランを打たれたのに自責点0ということもある?」
と思うかもしれません。
あります。
すでにエラーがなければ3アウトになっていたと判断される状況なら、その後に投手がホームランを打たれて失点しても、自責点が付かないケースがあります。
スコアだけを見ると、
「ホームランを打たれたのだから投手の責任では?」
と思ってしまいますが、自責点の計算ではそれ以前のプレーまでさかのぼって考えるわけです。
暴投で入った点は自責点?
暴投は投手自身の投球によるものなので、基本的に自責点の計算上も投手が責任を負います。
たとえば三塁走者が暴投で生還した場合、その走者が自責点の対象となる走者なら自責点になります。
「ミスで入った点だから自責点ではない」
とはなりません。
野手の失策と投手の暴投では扱いが違います。
捕逸の場合は?
暴投と間違えやすいのが「捕逸(パスボール)」です。
暴投は投手側の責任とされるプレーですが、捕逸は捕手側のミスとして扱われます。
そのため、自責点を計算する際の扱いも異なります。
同じようにボールが後ろへそれて走者が生還しても、
暴投なのか
捕逸なのか
によって自責点が変わる可能性があります。
試合中に公式記録が「暴投」なのか「捕逸」なのか気になるのは、このためでもあります。
投手自身のエラーなら自責点?
ここも少し意外です。
投手も守備についている野手の一人なので、投手自身に「失策」が記録されることがあります。
たとえば投手ゴロを捕ったあと、一塁へ悪送球して打者を出塁させた場合です。
この場合、
「自分でやったミスなんだから自責点では?」
と思うかもしれません。
しかし、自責点の計算では投手自身の守備上の失策についても、他の野手の失策と同じように考えます。
つまり、
投手自身のエラーが原因で発生した失点でも、自責点にならないことがあります。
「自分のミスなのに自責点ではない」という、少し不思議な現象が起こるわけです。
失点した投手と、そのとき投げている投手が違うこともある
もう一つ覚えておきたいのが、投手交代です。
たとえば投手Aがランナーを一塁に残して降板。
投手Bが登板したあと、その一塁走者がホームへ生還したとします。
この走者を出した責任は基本的に投手Aにあります。
そのため、実際にホームを踏んだときに投げていたのがBでも、失点はAに記録される場合があります。
中継ぎ投手の成績を見て、
「この投手は点を取られたはずなのに失点0?」
となることがある理由の一つです。
失点と自責点を見ると投球内容が少し分かる
投手成績を見るとき、防御率だけをチェックしている人も多いと思います。
しかし「失点」と「自責点」を一緒に見ると、その投手がどんな状況で点を取られているのかを考える材料になります。
たとえば、
失点50・自責点49
という投手と、
失点50・自責点35
という投手では、同じ50失点でも内容がかなり違います。
後者は守備のミスなどが絡んだ失点が多かった可能性があります。
もちろん、この数字だけですべてを評価することはできません。
それでも投手成績を見るときに、
「失点」と「自責点は同じではない」
と知っておくだけで、数字の見え方はかなり変わります。
野球中継で「この失点は自責点になりません」と実況されたときには、ぜひ直前のエラーやアウトカウントにも注目してみてください。


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