プロ野球の試合を見ていて、大差がついた終盤。
「もう勝敗はほぼ決まったし、投手を使うのがもったいないのでは?」
と思ったことはないでしょうか。
そんな場面で気になるのが、
野手を投手として登板させることはできるのか?
という疑問です。
普段はショートや外野を守っている選手が、突然マウンドに上がる。
日本のプロ野球ではかなり珍しい光景ですが、実際に起きたことがあります。
野手が投手として登板してもいい?
結論からいうと、
野手が投手として登板することは可能です。
「投手として登録されている選手しかマウンドに上がれない」というわけではありません。
その試合に出場できる選手であれば、普段の守備位置が内野手や外野手でも、投手として起用されることがあります。
もちろん、普通の試合なら投手として準備している選手を登板させます。
そのため野手登板を見る機会はほとんどありません。
では、なぜわざわざ野手を投げさせるのでしょうか。
最大の理由は「投手を温存したい」
野手登板が考えられる代表的な場面が、大量点差のついた試合です。
たとえば8回で、
0-10。
残りはわずか1イニング程度です。
逆転できる可能性はかなり低くなっています。
ここで勝ちパターンのリリーフ投手を投入すると、その投手は勝敗がほぼ決まった試合で肩を作り、実際に投球することになります。
翌日には接戦になるかもしれません。
だったら、
「今日は野手に最後まで投げてもらい、リリーフ投手を休ませよう」
という考え方が出てきます。
目の前の1試合だけではなく、その後の試合まで考えた起用です。
実際に巨人・増田大輝が登板している
日本のプロ野球で有名なのが、2020年8月6日の巨人-阪神戦です。
この試合で巨人は8回裏に大量失点。
0-11と大きくリードされた場面でマウンドに上がったのが、投手ではなく内野手の増田大輝でした。
増田は打者3人と対戦。
0回2/3を投げて、
被安打0
失点0
自責点0
で登板を終えています。
つまり、
本職の内野手が一軍公式戦で投手として登板し、実際に無失点で抑えた
わけです。
NPBの個人成績にも、この1試合が正式な投手成績として残っています。
なぜ増田大輝が投げたの?
この試合では巨人のベンチに、まだリリーフ投手が残っていました。
それでも野手の増田が起用されました。
理由として大きかったのが、投手陣の温存です。
当時は過密日程が組まれており、連戦を戦ううえでリリーフ投手の負担をできるだけ減らしたい状況でした。
しかも試合は0-11。
ここから逆転する可能性は極めて低い状況です。
そこで、
勝敗がほぼ決まった試合にリリーフ投手を使うより、翌日以降に温存する
という判断がされました。
当時はこの采配をめぐって賛否が起こりましたが、「野手登板」という言葉を日本の野球ファンに強く印象付ける試合にもなりました。
野手なら誰でも簡単に投げられる?
ルール上可能だからといって、誰でも簡単にマウンドへ送れるわけではありません。
プロ野球のマウンドからホームベースまでは約18.44メートル。
普段から投球練習をしている投手と違い、野手は試合で打者に向かって投げる準備をしているわけではありません。
さらに問題なのが故障です。
普段とは違うフォームで全力投球すれば、肩や肘を痛める可能性があります。
そのため実際に野手を登板させるなら、
投手経験がある
肩が強い
投球にある程度慣れている
といった選手の方が起用しやすいでしょう。
増田大輝にも高校時代の登板経験がありました。
野手が投げても投手成績は残る
ここも面白いところです。
野手だからといって、
「記録上は特別扱い」
になるわけではありません。
マウンドに上がって打者と対戦すれば、
登板
投球回
被安打
四球
奪三振
失点
自責点
防御率
などが投手成績として記録されます。
増田大輝の2020年の投手成績を見ると、
登板 1
投球回 0回2/3
被安打 0
四球 1
失点 0
自責点 0
防御率 0.00
となっています。
普段の成績表では「内野手」として打撃成績を見る選手なのに、投手成績にも名前がある。
知らずに記録だけを見ると、
「同姓同名の投手がいたの?」
と思ってしまうかもしれません。
逆に投手が野手を守ることもできる?
できます。
投手がマウンドを降りたあと、別の守備位置に移ること自体も可能です。
たとえば、
投手→外野手
別の投手が登板
その後、元の投手が再びマウンドへ
といった特殊な選手起用が理論上考えられます。
ただし選手交代との関係もあるため、一度ベンチへ退いた選手が再び試合に戻れるわけではありません。
「マウンドを降りた=必ず試合から退いた」
とは限らないところがポイントです。
メジャーリーグでは野手登板を見かけることもある
日本では野手登板というだけでニュースになるほど珍しいですが、アメリカのメジャーリーグを見ていると、大差の試合で野手がマウンドに上がることがあります。
考え方は基本的に同じです。
162試合という長いシーズンを戦うため、勝敗がほぼ決まった試合で本職の投手を消耗させたくない。
特に大量リードを許した終盤などでは、翌日以降を優先する判断がされることがあります。
日本の野球ファンからするとかなり奇妙に見える起用ですが、長いシーズン全体で考えれば合理的な面もあります。
野手が好投しても投手に転向するとは限らない
野手が1イニングを無失点に抑えると、
「投手でもいけるのでは?」
と言いたくなります。
ただ、1イニングを抑えることとプロの投手としてシーズンを戦うことはまったく別です。
投手には、
球速
制球
変化球
クイック
牽制
連投への対応
打者との駆け引き
など多くの能力が求められます。
打者側も、普段対戦していない野手のボールだからこそタイミングを合わせにくいことがあります。
一度無失点だったからといって、その選手が投手として通用するとは限りません。
野手登板でホームランを打たれたら?
もちろん通常の投手と同じです。
野手がマウンドに上がってホームランを打たれれば、
被本塁打
失点
自責点
などが投手成績に記録されます。
防御率も計算されます。
仮に1回だけ登板して1アウトも取れずに大量失点すれば、とんでもない防御率が残ることも考えられます。
反対に無失点で終えれば、増田大輝のように「防御率0.00」が記録として残ります。
本職ではないとはいえ、マウンドに立った瞬間から記録上は投手として扱われるのです。
野手登板は「試合を諦めた」ということ?
野手登板が議論になりやすいのはここです。
大量ビハインドとはいえ、
「まだ試合が終わっていないのに野手を投げさせるのは、試合を諦めたように見える」
という考え方があります。
一方で、
「ほぼ勝敗が決まった試合で重要な投手を消耗させる必要はない」
という考え方もあります。
どちらを重視するかで印象はかなり変わります。
143試合という長いレギュラーシーズンを考えれば、1試合を最後まで全力で戦うことだけがチームにとって最善とは限りません。
だからこそ野手登板は、単なる珍プレーではなく「シーズンをどう戦うか」という采配の話にもつながります。
大差の終盤に注目すると見られるかもしれない
日本のプロ野球では、野手登板は今でもかなり珍しい出来事です。
だからこそ、
「野手って投手をやっていいの?」
という疑問が出てきます。
答えは、
できる。しかも実際に一軍公式戦で行われたことがある
です。
大量点差がついた試合は、どうしても見るのをやめたくなります。
しかし、そんな試合だからこそ普段では考えられない選手起用が見られることがあります。
内野手が突然ブルペンへ向かう。
外野手がマウンドで投球練習を始める。
そんな光景が見えたら、むしろ最後まで見てみる価値があるかもしれません。
野球では「もう何も起こらないだろう」と思った試合から、後々まで語られる珍しい記録が生まれることがあります。


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