プロ野球の試合終盤。
「ここで代打○○!」
というアナウンスとともに、ベンチから強打者が登場することがあります。
試合の勝敗を左右する盛り上がる場面ですが、よく考えると代打には疑問もたくさんあります。
「代打はいつでも出せる?」
「一度ベンチに下がった選手はまた出られる?」
「代打の代打はできる?」
「代打でヒットを打ったら、その後も試合に出る?」
「打席の途中で代打を送れる?」
知っているようで意外と知らない「代打」のルールを整理します。
代打とは?
代打とは、試合に出場している打者に代わって打席に立つ選手のことです。
たとえば8回裏。
2アウト二塁で、次の打者は守備を得意とする選手。
しかしチームは1点負けています。
監督が、
「ここは守備よりも得点を取りたい」
と判断し、打撃を期待できる選手を送り出す。
これが代打です。
英語では「pinch hitter」と呼ばれ、スコアなどでは「PH」と表記されることもあります。
代打は何回から使える?
「代打=試合終盤」というイメージがありますが、何回以降でなければ使えないというルールではありません。
必要なら序盤でも代打を送ることができます。
たとえば先発メンバーにアクシデントがあった場合、1回から交代する可能性もあります。
また、大量得点が必要な展開や相手投手との相性などを考えて、通常より早い段階で代打を送ることもあります。
終盤に多いのは、ルール上の制限ではなく試合戦略によるものです。
一度代打を出された選手は試合に戻れない
これは代打を理解するうえで重要です。
通常のプロ野球では、一度交代して試合から退いた選手は、その試合に再び出場できません。
たとえば、
5番・一塁手A
↓
8回に代打B
となった場合。
A選手はこの時点で試合から退きます。
「9回になったから守備だけAに戻そう」
ということはできません。
野球には基本的に、一度退いた選手が再び出場する「再入場」はありません。
代打で出た選手はそのまま守備に就ける?
可能です。
代打として登場したからといって、その打席だけで必ず交代しなければならないわけではありません。
たとえば、
8回裏に代打B
↓
Bがヒット
↓
9回表にBがそのまま一塁の守備へ
ということもできます。
もちろんBが一塁を守れることが前提ですが、ルール上「代打だから守備に就けない」ということはありません。
代打の後に別の守備要員を出すこともある
逆に、代打専門の強打者をそのまま守備に就かせたくない場合もあります。
その場合、
8回裏 Aに代えて代打B
↓
9回表 Bに代えて守備要員C
という交代ができます。
この場合、AもBもすでに試合から退いているため、その後は出場できません。
終盤になるほどベンチに残っている選手が減っていく理由の一つです。
「代打の代打」はできる?
できます。
これを一般に「代打の代打」と呼びます。
たとえば右投手に対して左打者Bを代打として送ったとします。
すると相手チームが左投手へ交代。
そこで攻撃側も、
「それなら右打者Cに変更しよう」
と判断することがあります。
Bに代わってCが打席へ入ります。
これが代打の代打です。
代打の代打をされた選手はどうなる?
ここが重要です。
一度正式に代打として出場したB選手が、その後C選手に交代した場合、B選手はもうその試合には出られません。
仮にBが一球も打たずに交代したとしても同じです。
そのため監督としては、
「相手が投手を代えたらこちらも代打を変更すればいい」
と簡単に考えることはできません。
選手を一人使うことになるからです。
打席の途中でも代打を出せる?
できます。
たとえば打者Aが打席に立ち、
ボール
ファウル
ボール
で2ボール1ストライクになったところでアクシデントが発生。
Aが打席を続けられなくなったとします。
この場合、代打Bを送ることができます。
Bは新しく0ボール0ストライクから始めるわけではありません。
2ボール1ストライクの状態を引き継いで打席に入ります。
途中から出た代打が三振したら誰の三振?
ここはかなり面白い記録のルールです。
打席途中で打者が交代した場合、最終的な結果がすべて新しい打者の記録になるとは限りません。
特に三振や四球については、交代した時点のカウントによって記録の扱いが変わる場合があります。
たとえば2ストライクになった後に代打が送られ、その代打が三振した場合。
条件によっては、三振が最初の打者に記録されることがあります。
一方、四球についても交代時のボールカウントによって記録される選手が変わる場合があります。
かなり珍しいケースですが、
実際に最後の球を見た選手と、公式記録上の三振・四球が付く選手が違う
ことがあり得ます。
代打でホームランを打ったら「代打ホームラン」
代打として出場した選手がホームランを打てば、一般に「代打ホームラン」と呼ばれます。
特に終盤の接戦で出れば非常に大きな一打です。
満塁なら代打満塁ホームラン。
サヨナラの場面なら代打サヨナラホームラン。
代打は基本的に一度の打席で結果を求められるため、レギュラーとして4打席立つのとは違った難しさがあります。
代打でヒットを打ったら打率に入る?
入ります。
代打だからといって打撃成績が別枠になるわけではありません。
安打を打てば安打。
三振すれば三振。
本塁打なら本塁打。
通常の打撃成績として記録されます。
そのうえで「代打として何打数何安打」といった代打成績を別に見ることもできます。
代打で四球なら打数は増える?
通常の四球と同じです。
四球なら打席は増えますが、打数には入りません。
そのため代打で四球を選んでも、
「代打で0打数」
となることがあります。
以前の記事で紹介した「打席と打数の違い」が、ここでも関係してきます。
DHの選手にも代打を出せる?
出せます。
DH(指名打者)だから交代できないわけではありません。
DHに代打を送り、その代打が新しいDHとして打順に残ることもあります。
たとえば、
DHのAに代打B
なら、その後BがDHとして打順に残る形です。
DH制では守備位置の交代も絡むため、通常の代打より複雑な選手交代になるケースもあります。
キャッチャーに代打を出すときは要注意
試合終盤によくあるのが捕手への代打です。
打力を優先して捕手に代打を出せば、その捕手は試合へ戻れません。
次の守備では別の捕手が必要になります。
そのためベンチに捕手が何人残っているのかは非常に重要です。
延長戦の可能性があるのに捕手を使い切ってしまえば、アクシデントが起きたときに困ります。
監督は目の前の1点だけでなく、その後のイニングまで考えて代打を選ばなければなりません。
控え選手を全部使い切るとどうなる?
試合終盤になると、
「野手をほとんど使い切りました」
と実況されることがあります。
交代した選手は戻れないため、代打や代走を使えば使うほどベンチに残る選手は減っていきます。
延長戦に入ると、
代打を出したいけれど選手がいない
捕手を残しておきたい
ケガに備えて一人は残したい
といった問題が出てきます。
だからこそ、監督が好機でもあえて代打を出さないことがあります。
なぜ左投手には右の代打を出すの?
野球では一般的に、投手と打者の左右の組み合わせが重視されます。
右投手には左打者。
左投手には右打者。
が有利になる傾向があるため、相手投手に合わせて代打を選ぶことがあります。
ただし実際には選手ごとの得意・不得意があります。
右打者なのに右投手を得意とする選手もいますし、左右だけで単純に決められるものではありません。
現在では細かな対戦データも判断材料になります。
「代打を出さない」という采配もある
ファンから見ると、
「ここは代打でしょ!」
と思う場面があります。
しかし監督は、
この後の守備
延長戦
相手の投手交代
残っている控え選手
選手同士の相性
まで考える必要があります。
ここで切り札を使えば、もっと重要な場面で使えなくなるかもしれません。
代打は単純に「打率の高い選手へ交代すればいい」というものではないのです。
代打を見るなら「その後」まで注目
代打が告げられると、どうしてもその打席の結果だけに注目します。
しかし野球の面白いところは、その後にもあります。
代打で出た選手がそのまま守るのか。
さらに守備要員へ交代するのか。
その結果、打順と守備位置がどう変わったのか。
そしてベンチには誰が残っているのか。
特に延長戦では、序盤から選手をたくさん使ったことが後になって響く場合があります。
次に「代打○○」とアナウンスされたら、
「この選手を使ったあと、次の守備はどうするんだろう?」
というところまで見てみてください。
代打は一打席だけの作戦に見えて、実はその後の試合展開まで左右する選手交代なのです。


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