野球を見ていると、投手が1球も投げていないのに、打者がそのまま一塁へ歩いていくことがあります。
これが「申告敬遠」です。
以前のプロ野球では、敬遠する場合でも投手が実際にボールを4球投げる光景がおなじみでした。
ところが現在は、監督が球審に申告するだけで打者を一塁へ歩かせることができます。
では、
「普通の敬遠とは何が違う?」
「1球も投げないなら投手の球数は?」
「途中まで勝負してから申告敬遠できる?」
「申告敬遠された打者の打率は下がる?」
などはどうなるのでしょうか。
意外と細かいところまで知らない「申告敬遠」のルールを整理します。
申告敬遠とは?
申告敬遠とは、守備側の監督が球審に故意四球とする意思を伝えることで、実際に4球のボールを投げなくても打者に一塁を与えられる制度です。
つまり、
「この打者とは勝負せず、一塁へ歩かせます」
と守備側が申告できるルールです。
たとえば2死二塁で、次の打者が非常に好調だったとします。
その打者との勝負を避けたい場合、監督が申告敬遠を選択すれば、投手はその打者に投球することなく2死一、二塁となります。
日本のプロ野球ではいつから?
日本のプロ野球では2018年から申告敬遠が導入されました。
それ以前の敬遠は、捕手が立ち上がって大きく外れたボールを要求し、投手が実際に4球投げるのが一般的でした。
現在でも従来のように投球して敬遠すること自体は可能です。
つまり、
「敬遠するなら必ず申告しなければならない」というルールではありません。
申告敬遠という新しい選択肢が追加された、と考えると分かりやすいでしょう。
申告敬遠と普通の敬遠の違い
最大の違いは、実際に投球するかどうかです。
従来の敬遠では、投手がボールを投げて四球にします。
そのため、投球が大きくそれれば暴投になる可能性がありますし、走者が隙を見て進塁することもあります。
投手がボークを犯す可能性もゼロではありません。
一方、申告敬遠では投球そのものがありません。
そのため、敬遠のための投球中に何かが起こることもありません。
守備側にとっては、より確実に打者を一塁へ歩かせることができます。
申告敬遠は投手の球数に入る?
入りません。
実際には1球も投げていないため、申告敬遠のための球数は投球数に加算されません。
たとえば投手がその時点で99球を投げていたとします。
そこで申告敬遠をしても、球数は99球のままです。
次の打者への初球を投げて初めて100球になります。
昔のように4球投げて敬遠した場合は、その4球も当然投球数に含まれます。
途中から申告敬遠することもできる
実は、申告敬遠は打席の最初にしかできないわけではありません。
一度勝負を始めてから、
「やっぱり勝負をやめよう」
と申告敬遠に切り替えることもできます。
たとえば2ボール0ストライクになったところで、ベンチが申告敬遠を選択することも可能です。
この場合、それまで実際に投げた2球は投球数として残ります。
申告した後に「残り2球分」が球数へ追加されることはありません。
申告敬遠されたら打率は下がる?
申告敬遠は故意四球として記録されます。
四球は打席には数えられますが、打数には入りません。
そのため、申告敬遠されたことによって打率が下がることはありません。
たとえば10打数3安打、打率.300の選手が申告敬遠されたとしても、
10打数3安打のままなので、打率は.300です。
一方で出塁したことにはなるため、出塁率には関係してきます。
「打席」と「打数」は同じように見えて実は違うため、このあたりを理解すると野球の個人成績もかなり見やすくなります。
満塁でも申告敬遠できる?
ルール上は可能です。
ただし満塁で打者を歩かせれば、押し出しで相手に1点が入ります。
そのため、普通の試合で満塁から申告敬遠することはまずありません。
それでも、
「どうしてもこの打者だけとは勝負したくない」
という特殊な状況なら、1点を与えてでも次の打者との勝負を選ぶことはルール上できます。
野球では「敬遠=必ず得をする作戦」とは限らないわけです。
申告敬遠された走者はどうなる?
申告敬遠も四球と同じように扱われるため、塁上の走者は必要な場合だけ押し出されます。
たとえば、
二塁だけに走者がいる
→ 打者が一塁へ。二塁走者はそのまま。
一塁に走者がいる
→ 打者が一塁へ行くため、一塁走者は二塁へ。
一、二塁に走者がいる
→ 打者が一塁、一塁走者が二塁、二塁走者が三塁へ。
満塁
→ 三塁走者が本塁へ進み、1点入る。
という形です。
なぜ申告敬遠が導入された?
大きな目的の一つが、試合時間の短縮です。
勝負しないことが決まっている打者に対して4球投げる時間を省略できます。
ただ、導入された当初は野球ファンの間でも賛否がありました。
従来の敬遠では、投手が大きく外したボールを打者が無理やり打ちにいったり、暴投によって走者が進んだりすることがありました。
つまり「敬遠の4球」にもプレーが起こる可能性があったのです。
申告敬遠ではその部分が完全に省略されます。
効率的になった一方、昔の敬遠にあったハプニングがなくなったともいえます。
申告敬遠は誰が決める?
申告を行うのは守備側チームの監督です。
投手が自分の判断で勝手に打者を一塁へ歩かせる制度ではありません。
もちろん実際の試合では、ベンチが投手や捕手と意思を共有したうえで作戦として選択します。
敬遠は単に「強打者が怖いから歩かせる」というだけではありません。
次の打者との相性や左右、アウトカウント、走者、点差など、さまざまな状況から判断されます。
申告敬遠の後こそ面白い
申告敬遠を見ると、
「勝負してほしかった」
と思うこともあります。
ただ、野球の作戦として考えると面白いのはむしろその後です。
強打者を歩かせた結果、次の打者に打たれてしまえば敬遠策は失敗。
逆に次の打者を抑えれば、ベンチの判断が成功したことになります。
申告敬遠が出たら、
「なぜこの打者を歩かせたのか」
「次の打者なら抑えられると考えた理由は何か」
まで考えてみると、野球観戦が少し違って見えてきます。
単に「勝負を避けたプレー」ではなく、監督と打者、投手の駆け引きが詰まった作戦の一つです。

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