野球は3アウトで攻守交代。
これは野球を知っている人なら当たり前のルールです。
そして三振を取れば基本的には1アウト。
だったら、1イニングに取れる三振も最大3つ――と思いますよね。
ところがプロ野球の記録を見ると、
「1イニング4奪三振」
という不思議な記録が実際に存在します。
しかも記録ミスではありません。
では、3アウトしかないはずの1イニングで、どうやったら4つも三振を奪えるのでしょうか。
1イニング4奪三振は実際にある
結論からいうと、
1イニングに4奪三振は可能です。
ポイントになるのが「振り逃げ」です。
三振というと、
三振=1アウト
と思いがちですが、実は必ずしもそうではありません。
第3ストライクの投球を捕手が正規に捕球できず、条件を満たしていれば、打者は三振を記録されたあとでも一塁へ進むことができます。
つまり、
三振は記録されたのにアウトは増えない
ということがあるのです。
これを利用すると1イニング4奪三振が成立します。
どうやったら4奪三振になる?
分かりやすい例を考えてみます。
投手が最初の打者から三振を奪います。
これで、
1奪三振
1アウト
です。
次の打者も三振。
2奪三振
2アウト
となります。
ここまでは普通です。
そして3人目の打者も三振。
ところが第3ストライクを捕手が捕れず、ボールが後ろへ転がってしまいました。
打者は一塁へ走り、セーフ。
記録上は三振なので、
3奪三振
になります。
しかし打者がアウトになっていないため、アウトカウントはまだ2アウトです。
そこでもう一人打者が登場。
この打者から三振を奪えば、
4奪三振
3アウト
となります。
これでイニング終了。
結果として、
1イニングで4つの三振を奪った
という記録が完成します。
「三振したのに打者がアウトじゃない」がポイント
この記録が分かりにくい最大の理由は、
「三振=アウト」
というイメージが強いからです。
通常はその認識で問題ありません。
しかし記録上の「三振」と、アウトカウントの「アウト」は完全に同じものではありません。
振り逃げが成立すると、
投手には奪三振が記録される
↓
しかし打者は一塁へ生きる
↓
アウトは増えない
↓
さらに次の打者と対戦できる
という状況になります。
だから3アウトになるまでに4人以上から三振を奪えるわけです。
実際に佐々木朗希も4奪三振を記録している
有名な実例の一つが佐々木朗希です。
2022年7月1日の楽天戦。
佐々木朗希は初回に、
西川遥輝
小深田大翔
浅村栄斗
島内宏明
から三振を奪い、1イニング4奪三振を記録しました。
最初の西川の三振で振り逃げが発生。
そのため三振を一つ記録してもアウトにならず、その後さらに3つの三振を奪うことができました。
NPB公式では、この記録を当時「プロ野球26人目、27度目」としています。
日本を代表する奪三振能力の高い投手が達成しているので、「4奪三振」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
松井裕樹も1イニング4奪三振
2018年5月4日には楽天の松井裕樹も4奪三振を記録しています。
9回表にまず2つの三振を奪いました。
続く打者への第3ストライクが低く、捕手が止められなかったため、打者が一塁へ。
ここで三振と暴投が記録されます。
ただしアウトは増えません。
そして次の打者からも三振を奪い、
1イニング4奪三振
となりました。
こうして実際の流れを見ると、「4つ目の三振」が突然増えるわけではなく、振り逃げによって打者が一人多く回ってきた結果だと分かります。
2026年にも4奪三振が記録されている
過去だけの珍記録ではありません。
2026年8月にはファームで、
広島・杉田健
DeNA・島田舜也
がそれぞれ1イニング4奪三振を記録しました。
島田の場合は、三者連続三振でチェンジかと思われたところで捕逸による振り逃げが発生。
そこからさらに打者との対戦が続き、最後にもう一つ三振を奪って4奪三振となりました。
「三振を3つ取ったのにイニングが終わらない」という、まさにこの記録を象徴する展開です。
では1イニング5奪三振もできる?
4つできるなら、
5つもできるのでは?
と考えたくなります。
理屈の上では可能です。
振り逃げによって、
三振
↓
打者が一塁へ生きる
↓
また三振
↓
また打者が生きる
ということが繰り返されれば、3アウトになる前に三振の数だけが増えていきます。
そして実際に日本のプロ野球で、
1イニング5奪三振
が記録されたことがあります。
二軍では本当に5奪三振が記録されている
2010年5月8日の楽天-日本ハムの二軍公式戦。
楽天の木谷寿巳が7回表に、
空振り三振
三振+暴投
空振り三振
三振+暴投
空振り三振
という形で5奪三振を記録しました。
2度の振り逃げがあったため、
三振を5つ奪ってようやく3アウト
となったわけです。
NPB公式によると、二軍公式戦ではこの5奪三振が最多記録です。
1イニングでアウトは3つしか取れないのに、スコアには「奪三振5」。
知らなければ記録を見間違えたと思ってしまいそうです。
1イニング6奪三振も理論上は可能?
ではさらに、
「6奪三振は?」
となります。
これも理屈だけなら可能です。
振り逃げが何度も成立してアウトが増えなければ、打者との対戦を続けることができるからです。
極端にいえば、振り逃げが繰り返されれば4や5で必ず止まるというルールではありません。
ただし実際には、
何度も第3ストライクを捕手が捕れない
打者がそのたびに一塁へ生きる
それでも投手が三振を取り続ける
という非常に特殊な展開が必要です。
4奪三振ですら珍記録。
5奪三振となれば、さらに珍しくなります。
6奪三振となると、現実の試合では相当な偶然が重ならないと見ることはできないでしょう。
振り逃げは空振りしたときだけではない
ここでもう一つ勘違いしやすいポイントがあります。
「振り逃げ」という名前なので、
バットを振らなければ成立しない
ように思えます。
しかし、そうではありません。
第3ストライクが見逃しだったとしても、捕手が正規に捕球できず、振り逃げが可能な条件を満たしていれば打者が一塁へ進めることがあります。
つまり、
見逃し三振
↓
でも捕手が捕球できない
↓
打者が一塁へ
ということもあり得ます。
「振り逃げ」という呼び方から想像すると、かなり違和感があります。
振り逃げならいつでも一塁へ走れるわけではない
もちろん、第3ストライクを捕手が落とせば必ず走れるわけではありません。
基本的には、
一塁に走者がいない場合
または、
2アウトの場合
に打者が走者となる可能性があります。
0アウトまたは1アウトで一塁に走者がいる場合は、第3ストライクを捕手が正規に捕球できなくても、通常はその時点で打者アウトになります。
これは、振り逃げを利用して守備側が意図的に併殺を狙うような状況を防ぐ意味もあります。
そのため1イニング4奪三振が生まれるには、アウトカウントや走者の状況も関係してきます。
「1イニング4三振」という打者側の珍記録にもなる
投手から見れば「1イニング4奪三振」。
では打者側から見るとどうなるのでしょうか。
当然、
チームとして1イニングに4三振
したことになります。
普通なら三振を3つした時点でチェンジです。
それなのに4人が三振している。
スコアを後から見た人にとっては、かなり不思議な記録です。
2023年4月8日のソフトバンク-西武戦では、西武・髙橋光成が1イニング4奪三振。
反対にソフトバンクには「イニング4三振」が記録されています。
一つの珍記録を、投手側と打者側の両方から見ることができるわけです。
三振数だけではアウト数は分からない
野球の記録を見ると、
三振3=3アウト
と無意識に考えてしまいます。
ほとんどの場面ではそれで問題ありません。
しかし振り逃げが絡むと、
三振したのにアウトにならない
ということがあります。
その結果として生まれるのが、1イニング4奪三振や5奪三振です。
もし試合中に、
「この回、もう三振3つ目じゃない?」
と思ったのに攻撃が続いていたら、スコアの間違いではないかもしれません。
むしろそのときは、
かなり珍しい1イニング4奪三振が生まれる瞬間
を見ている可能性があります。
普段なら守備側にとって嫌な振り逃げも、記録という視点から見ると、一気に珍記録誕生のチャンスに変わります。


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